歯を残すためにできること

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歯周組織再生療法 2025.6.7

― 歯周組織再生治療とは ―

こんにちは。今回は「歯周組織再生治療」についてご紹介します。
歯周病が進行すると、歯を支えている骨(歯槽骨)や歯根膜といった「歯周組織」が破壊され、最終的には歯が抜けてしまうこともあります。
しかし、近年では歯周組織を再生させる治療が可能になってきました。

歯周病とは?

歯周病は、プラーク(歯垢)に潜む細菌によって歯ぐきに炎症が起こり、進行すると歯を支える骨が溶けてしまう病気です。
自覚症状が少なく、知らないうちに進行してしまうのが特徴です。

こんな症状はありませんか?

  • 歯ぐきが腫れている・出血する
  • 口臭が気になる
  • 歯がグラグラする
  • 歯が長くなったように見える

治療事例のご紹介

今回ご紹介する患者様は、左上の奥歯が欠けて痛みと歯の揺れが気になるとのことで来院されました。
昔から歯科が怖く、受診を避けてこられたそうですが、痛みに耐えかねて来院を決心されたとのことです。

診察の結果、問題の歯には強い力がかかり歯が欠け、神経にダメージが及んでいました。
さらに、歯周病の進行も見受けられました。
つまり、歯の痛み歯の揺れは異なる原因によるもので、2種類の治療が必要でした。

治療方針

今回の歯周病は重度に進行しており、一昔前なら抜歯が選択されていた状態でした。
しかしこの歯を失うと咀嚼機能が極端に落ち、インプラント入れ歯が必要になります。

患者様は今まで入れ歯未経験で抵抗感が強く、インプラント治療も希望されなかったため、歯を残す選択をされました。

歯周治療の流れ

① 初診・検査

  • 問診・診察(歯ぐきの腫れ、出血、歯のぐらつきなど確認)
  • 生活習慣(喫煙、食事、口腔ケア状況)の確認
  • プロービング(歯周ポケットの深さ測定)
  • 歯の動揺度の確認
  • レントゲン撮影(歯槽骨の状態確認)
  • プラーク染め出し、歯石の有無確認

② 初期治療(基本治療)

  • ブラッシング指導(正しい歯磨き方法の指導)
  • スケーリング(歯石除去)
  • ルートプレーニング(歯ぐきの中の歯石や感染物質を除去、歯根面の滑沢化)

③ 再評価

  • プラークコントロール状態の確認
  • 歯周ポケットの深さ再測定
  • CT検査歯型検査で手術計画を立案

④ 外科処置(歯周組織再生治療)

失われた歯周組織・骨・歯ぐきの再生を目指す先進的な治療法です。

⑤ 術後の経過観察とメンテナンス

  • 再生治療後は最低1年、経過を観察
  • 1年後に治療効果を評価
  • **メンテナンス(SPT)**の継続:
    • プロフェッショナルケア
    • 他の歯の歯周ポケットチェック
    • プラーク・歯石除去
    • ブラッシング指導の見直し
    • 生活習慣管理

歯周組織再生治療のメリット・注意点

メリット

  • 歯を抜かずに残せる可能性が高まる
  • 見た目や噛み合わせが改善される
  • 治療後の再発リスクを低減

注意点

  • 再生可能な症例は限られる
  • 保険適用外のケースが多い
  • 術後ケアとメンテナンスが必須

まとめ

歯周病が進行しても、「抜歯」しか選択肢がないわけではありません
歯周組織再生治療は、歯をできるだけ長く使いたい方にとって希望の持てる治療法です。

お口の健康を守るために、気になる症状がある方はぜひ一度ご相談ください。
当院ではカウンセリングからアフターケアまで丁寧に対応いたします。

補足

歯周病は慢性疾患です。治療後も継続的なケア定期的な通院が非常に重要です。
放置すると歯の喪失全身疾患(糖尿病、心血管疾患など)にも影響が出るため、早めの治療と予防が大切です。

監修者情報

歯科医師:藤尾隆史

院長:藤尾隆史

  • 2003:私立高槻高校卒業
  • 2010:大阪大学歯学部卒業
  • 2015:大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴
  • 2016~2024:山本歯科クリニック 入職 
  • 2017~2024:大森歯科医院 非常勤勤務
  • 2024:藤尾歯科・矯正歯科医院を開業