根本解決型医療とは?

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歯科コラム 2023.12.5

「左上の歯ぐきが腫れていて、物を噛むと痛い」

という理由で、ある患者様が来院されました。

定期的に通院していた医院では、歯根破折(歯の根が割れている)をしており、抜歯の可能性があると診断されたようです。

  • 「定期検診に行くたびに、虫歯や問題が見つかり治療をしている。」
  • 「歯を大事にしたい思いとは裏腹に、どんどん悪くなっている。」
  • 「生まれつき歯が弱いのかな?」

と諦めにも取れる不安を感じておられました。

私が診させて頂いたところ、やはり、左上の歯は歯根破折をしており、保存はできないと判断しました。

初診時の様子

現状の写真を見て、歯を残せない状況には納得して頂きましたが「それでもなんとか歯を残せないでしょうか?」という患者様の言葉に、これ以上歯を失いたくない、歯を大事にしたい、という患者様の思いを強く感じました。

原因療法を追究する事の大切さを痛感

このように、治療しているにも関わらず悪くなっていく日本の歯科の現状について私はいつも疑問を感じています。

そしてその為には対症療法から抜け出し、原因療法を追究する事が大切だと考えおります。

私が歯科医師になって間もない頃、“虫歯で歯が痛い”、“被せ物が取れた”などの訴えの方がたくさん来院される病院で勤務しておりました。

そこでは、ひたすら削って詰める、何度も治療した結果、歯が少なくなり、最後には抜歯をするということを繰り返していました。歯を抜いたところに、ブリッジや入れ歯を作ると、またその歯が虫歯になってくる。

「患者様の口腔内を良くしているのか?」
「患者様のためになっているのか?」

私は自責の念を感じていました。

両親も歯医者ではなかったですし、当時の上司の先生にも、「歯科の仕事ってこんなもんだよ」 と、真面目には取り合ってもらえず、誰にも相談ができませんでした。

「でも、こんなことでいいはずがない。自分が、自分の大切な人がこんな口腔内になっていくのは耐えられない。」と思いました。

歯科医療の本質を学ぶために一念発起

そこで、医院を退職し、私は様々な書籍を読み、勉強会や講習会に積極的に参加し、歯科医療の本質を学び始めました。

開業前に勤務させて頂いた臨床経験の豊富な先生方との出会いも、そういった学びの場からでした。

そして前職では長期経過良好の患者様の治療に多くあたらせて頂いたり、高い治療技術や診断力を身につける為の経験を沢山させて頂きました。

原因療法を患者さんにも説明

話が少し逸れてしまいましたが過去の苦い経験から

  • 虫歯になったので削って詰める
  • 歯を抜いたのでインプラントをする

といった対症療法を繰り返すのではなく、虫歯になった原因、歯を抜くに至った原因を突き止め、その対策を講じる原因療法について患者さんに説明をさせて頂いたところ、きちんと治していくことにご理解を頂けました。

原因を突き止める為の詳しい検査を実施

まずは、現状に至った原因を突き止める為に、詳しい検査を行いました。

虫歯の検査、歯周病の検査、噛み合わせと力の検査、これまでの歯科治療の経緯など。
お口の中全体の検査を行うとともに、患者様の生活習慣なども伺いました。

最初は多くを語って頂けませんでしたが、共に問題を考え、解決策を見つけようという私達、歯科医師、衛生士の姿勢に共感して頂けたのか、少しずつお話して下さるようになりました。

検査を行う中で見えてきた根本的な原因

その中で、仕事中に缶コーヒーを常飲していたことや、仕事も夜遅く夕食を食べてすぐに就寝してしまうこともあったようです。
また、夜間の歯軋り、日中の歯と歯を接触させる習癖(TCH)を自覚されていました。

虫歯の根本的な原因、歯が壊れていく原因はこれらにあると考え、原因とその対策、治療法をご説明させて頂きました。

どの歯をどのように治療するかの治療内容の説明はあっても、真の原因の説明をお聞きになったことは初めてだったようで

「そういうことだったのか…ようやく納得がいきました!」

「こんな説明は聞いたことがなかったです。」

というお言葉を頂戴しました。

真の原因が判明すれば、治療法も明確になります。

我々歯科医院ができること、患者様が自身のお口のためにできることが明確になり、本当の意味で手と手を取り合うことができると感じた瞬間でした。

問題解決へ向けた治療計画のご提案

次に歯を失うリスクを最大限低減する治療方法のご提案をさせて頂きましたが、多数の歯の治療を行うとなると、治療期間や治療費用がどうしてもかかってしまいます。

しかし患者様はお仕事が忙しく、通院できる日が土曜日に限られていたことや、これまでに歯科治療に高い費用をかけてこられており、更に費用がかかることに不安を感じておられました。
当然の心配だと思います。

そこで患者さんの負担を軽減するために、保険治療の適応範囲を活かし、治療中の不具合を最小限に抑えつつ、治療を進める工夫も凝らした治療計画をいくつかご提案させて頂き、治療が始まりました。

今回の患者様のように、歯軋りなどの力の関与で歯を失った場合、インプラントは有用です。


ですが、インプラントを行うためには骨が不足していました。

患者さんの通院状況を加味し、治療期間短縮のために、インプラントの埋入と同時に骨造成術も行いました。
※骨の不足を補う骨造成治療やインプラント治療などは全てエビデンスに基づいた治療を心がけています。
(同時の処置できる条件を満たしていたので、同時に行うことができました。)

治療期間は約2年かかりました。

「お疲れ様でした。治療は一旦終了です。
決して楽な道のりではなかったと思います。
今後トラブルが一切ないとは言い切れませんが、大きな治療になる事はないでしょう。」

とお伝えしたところ、患者様は安心感と喜びを表情に現しておられました。

そして術者である私自身も、患者様から厚く信頼して頂けている実感を覚えました。

これから生涯にわたって、治療させて頂いた患者様の口腔内を維持管理していく責任が、私にはあると感じています。

現在は約5年良好に経過しております。

最後に

私は患者様自身が自分の歯を大切にし、健康を手に入れるお手伝いをすることが歯科医療の目的だと考えています。

真の原因を見極め、それに基づいた治療や予防を提案し、患者さんと共に 歩む姿勢を大切にしています。
歯科治療は単なる対症療法ではなく、根本的な原因を理解することが重要です。
患者さんと共に、お口の健康について考えていくことで、より良い未来が築けると信じています。

最後まで読んで頂き有難うございます。

再治療を繰り返す患者様は少なくありません。
問題には必ず原因があります。
「なぜ歯が悪くなってしまったのか?」
一緒に考えてみませんか?