状態が悪い歯をおいておくことのデメリット

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歯科コラム 2024.4.26

歯医者さんで、「歯の根の先が膿んでいる、歯周病が進んでいる、もしくは歯が割れているので、処置が必要、場合によっては抜歯になる」と言われたけれども、自覚症状が少ないので様子を見てみようと考えたことはありませんか?

検診にまめに通っていれば、なんとかなるかもしれないとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

確かに適切な診査、診断の下、メインテナンスでコントロールできる場合もあります。

しかし、医学的に見て、コントロールできないものもあります。

歯根破折の症例

来院動機から診察までの患者様とのやり取り

患者様は被せ物が取れたので付け直して欲しいとのことで来院されました。

これまでも同じところが何度も取れてしまっていたそうです。前の歯医者さんでは、取れるたびに付け直しを行ってきたが、数ヶ月もしないうちに取れてしまっていたそうです。

簡単に取れてしまうことが心配になり、セカンドオピニオンという形で私が診察させていただくことになりました。

見させていただくと、歯が割れていました。歯の保存ができないと正直にお話し、処置を先送りにする場合のリスクなどもご説明させていただきました。

当院では現在の状態の写真を撮り、ご説明させていただいております。

歯根破折

私(歯科医師):「歯が割れています。割れ目に沿って細菌が侵入しています。(黒い部分)細菌の侵入により、歯を支えていた骨が吸収し、骨をカバーしていた歯茎も無くなってしまっている状態です。残念ながら被せ物を戻すことができません。」

患者様(Mさん):「そうなるとどうなりますか?どうすれば良いですか?」

私(歯科医師):「これ以上の細菌の侵入を防ぐには、歯を抜くことが第一選択となります。」

患者様(Mさん):「このままで置いておくことは問題ありますか?」

私(歯科医師):「最終的な抜歯のご決断はMさんに委ねることになりますが、このままで置いておく、様子をみることはお勧めしません。仮にこのまま置いておいても、必ず自覚症状は出現します。歯茎から出血や膿が出てくる、それに伴う腫れや痛み、そして歯のぐらつきなどです。遅かれ早かれ処置を考えないといけない時はくると思います。」

患者様(Mさん):「どのくらいでその症状は来ますか?」

私(歯科医師):「医学的に見て、現状もかなり状況が良くありませんので、いつ症状が出てもおかしくはありません。」

患者様(Mさん):「抜歯したその後はどうなりますか?」

私(歯科医師):「インプラント、もしくはブリッジ、入れ歯という選択肢になります。両隣の歯が全く治療されていないので、両隣の歯を削るブリッジや入れ歯よりもインプラントが良いと思いますが、Mさんの場合、歯が割れてしばらく経っていて、細菌感染が大きく、骨が吸収している状態ですので、インプラントやブリッジを行う場合、骨や歯茎の増大術が必要になる可能性が高いです。」

患者様(Mさん):「その歯茎や骨の処置をしないでインプラントはできないですか?」

私(歯科医師):「骨の中にきちんと収まっていないと、インプラント周囲炎などのトラブルのリスクが高くなりますので、インプラントをするなら骨や歯茎を増やすことは切り離せないと思います。そして、それがご不安でしたら、インプラント以外の方法を考えた方が長い目で見て、Mさんにとってマイナスにはならないと思います。」

患者様(Mさん):「これは元々の私の骨の問題なのですか?」

私(歯科医師):「おそらくですが、歯が割れて長期経過していると思われます。その間、細菌感染により、ゆっくりと自分の骨が無くなってしまったと思われます。ですので、もう少し早く現状把握ができていれば防げたかもしれません。」

患者様(Mさん):「わかりました。少し考えます。」

以上のようなやり取りをさせていただき、後日、電話にて抜歯のご予約を取られました。

抜歯を選択された(術前・術後)

抜歯を行った当日に、インプラントの治療について前向きに考えているので、今後の流れなどを聞きたいとおっしゃられていましたので、改めてお話しのお時間をとらせていただきました。

(この部分のお話は、別のページにてお話したいと思います。骨や歯茎が不足している部分へのインプラント治療例(GBRとFGGの応用)

このように悪い状態の歯をおいておくことのメリットもあるかもしれませんが、デメリットの方が大きく上回ることがあります。

今回のデメリットは抜歯を先延ばしにしたことで、組織が多く失われ、インプラントの処置にあたり、追加の処置が増えたということになります。

私は、常に自分だったら、自分の家族だったらどういう選択をするだろうか、どういうアドバイスをしてあげれるだろうか、ということをよく考えるようにしています。

今良くても、後々辛い処置が予想されるのであれば、早めの決断をした方が良いこともあると思っています。

可能な限り曖昧な言葉を避け、的確な事をお伝えできるように、診査と診断も大切にしております。

また、歯科の勉強をしてきた中で、幸いなことに様々な先生とも知り合うことができましたので、ご希望があればご紹介することも可能です。

ご自身の歯に不安を感じていらっしゃる部分がありましたら、お気軽にご相談ください。

監修者情報

歯科医師:藤尾隆史

院長:藤尾隆史

  • 2003:私立高槻高校卒業
  • 2010:大阪大学歯学部卒業
  • 2015:大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴
  • 2016~2024:山本歯科クリニック 入職 
  • 2017~2024:大森歯科医院 非常勤勤務
  • 2024:藤尾歯科・矯正歯科医院を開業