保険治療の落とし穴

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歯科コラム 2025.2.19

虫歯で歯が痛い、歯が欠けた、穴があいているので、虫歯に侵されてしまった部分(脱灰した歯質)を削除し、歯の欠損部を何らかの方法で修復する。

ごく一般的な治療ですが、その際に、保険適応内の白い材質のもので修復するか、金属で修復するか、はたまた、見える部分なので、保険外適応の白い材質(セラミック)でより審美的に修復するか、どれにするかと歯科医師から聞かれたことはないでしょうか。

“自分にとっての保険適応外の治療のメリットがいまいちわからない”

“今は、保険適応でも白い歯ができるから、それなら保険適応できる方がいいじゃないか、どうせ奥歯は見えないし、金属でいいよ”

と考えられている方も多いと思います。

当院では、虫歯が大きく、間接修復(型取りをして、口腔外で修復物を作成し、後日完成した修復物を装着する方法)を行う場合、保険外治療を行っています。

材質の違いに関わらず、つまり白かろうが、金属であろうが、保険適応外ということです。

保険治療の問題点は再発率の高さ

保険適応治療の問題点は再発率の高さにあります。病気の再発率の高さは生涯の歯の存続に関わります。

ではなぜ、再発率が高いのか?

それは適合精度の不良が最も影響していると考えます。(以前のブログもご参照ください被せ物治療の保険治療と保険外治療の違い(長期経過症例から言えること)

症例

今回お示しします事例は28歳の男性で、定期検診希望で来られた患者様です。

虫歯の検診をしていく中で、右上の奥歯に虫歯、細菌の侵入があることが確認できました。

レントゲンで見ても、自身の歯に対して、詰め物が適合しておらず、隙間があることが伺えます。

この問題を指摘したところ、2-3年前に治療した歯だそうで、信じられないといった様子でしたが、レントゲンの画像でご理解いただけたようでした。

じゃあどうすれば良いのか・・・同じようにやり直し治療をしても同じ結果にしかならない可能性が高いわけです。

その度に歯を削っていく、、まだ28歳という若さで、もうすでに2回治療している。

今回で3回目になるわけです。このペースでは40歳くらいでこの歯は失われてしまうかもしれません。

なぜこうなってしまったかの原因を伝え、適切な治療の重要性をご説明しました。

結果的に、保険適応外の治療の必要性をお伝えし、ご理解いただけました。

実際に行った治療は写真でお示します。

医原性疾患になりえる

結論から申し上げますと、これは医原性疾患と言えると思います。

つまり、歯医者の不適切な治療により、作ってしまった病気ということです。

前医が下手だったのか、、そうではありません。

保険治療では対応できないほどの大きな虫歯に対して、無理くりに保険治療内で行ったからです。

その当時の患者様にとっては、それで良かったかもしれません。

しかしながら、数年で再び問題が起き、再治療を余儀なくされてしまった。果たしてこれは本当に良かったのでしょうか。

いやいや、費用が抑えられたのだから、それはそれで良かった、仕方がなかった。

ごもっともなご意見です。

歯科における保険治療は経済的なのか

費用が抑えられた、、果たしてそうでしょうか。

治療を繰り返せば、保険治療といえども費用はかさみます。ましてや歯を失った場合、さらに治療費はかかります。適切な治療をして、自分の歯を長く残すことの方が、よっぽど経済的です。

目先のお金はかかっても、生涯コストは圧倒的に抑えられるということです。

保険治療による多大な恩恵もありますが、適材適所です。保険治療にも限界があるということです。

当院では、保険治療でも十分に質が担保できる治療は保険治療でカバー致します。

しかしながら、歯の喪失に影響する、再発リスクの高い虫歯治療に関しては保険外治療を行う方がベターだと考えています。

老後の後悔ナンバー1は「歯を大事にしなかったこと」だそうです。ご参考になりましたら幸いです。

症例概要

Y.T様
主訴定期検診希望
年齢28歳 男性
治療内容虫歯治療(再治療) 
治療期間約4ヶ月
費用歯冠長延長術:¥70,000
セラミック修復:¥100,000
治療のリスク外科処置を伴い、組織の治癒を待つ期間が必要となる(約2ヶ月)

監修者情報

歯科医師:藤尾隆史

院長:藤尾隆史

  • 2003:私立高槻高校卒業
  • 2010:大阪大学歯学部卒業
  • 2015:大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴
  • 2016~2024:山本歯科クリニック 入職 
  • 2017~2024:大森歯科医院 非常勤勤務
  • 2024:藤尾歯科・矯正歯科医院を開業